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ストーマ保有者のためのDIYキャンピングカー 内装材についての検討

キャンピングカーのDIYサイトを見ていると、さまざまな素材が出てきますが、軽トラックなどの荷台に乗せて使用するシェルで使用する素材であっても、バン・ワゴン・バスなどをベースとする車両では使用できない素材があります。

現在私が検討中の「オストミーペイシェント向けのストーマ交換スペース付き車両」は、「特種用途自動車の構造要件を満たすキャンピング車」ではありません。

タウンエースバン・NV200バネット・ハイエースやキャラバンのうち「全長 4.7m以下・全幅 1.7m以下・全高 2.0m以下・定員 10人以下・排気量 2,000cc以下」の車両など、いわゆる「4ナンバーのついている小型貨物自動車」をベースに、製作誤差の範囲として許容されている「長さ±30mm・幅±20mm・高さ±40mm・車両重量±50kg」の範囲内に収まるように製作している車両です。
簡単に言うと、車検証の変更をせずに、そのまま次の車検を通せることを目標としています。

ちなみに、ハイエースやキャラバンなどでも1ナンバーのついている車両や、フィアットのデュカトなど、普通貨物自動車をベースする場合、製作誤差の範囲として許容されているのは「長さ±50mm・幅±30mm・高さ±60mm・車両重量±100kg」の範囲内、
エブリイ・ハイゼットカーゴなどの軽バン、の場合、製作誤差の範囲として許容されているのは「長さ±30mm・幅±20mm・高さ±40mm・車両重量±40kg」の範囲内となります。軽バンベースだと40kg以内に収める必要がありますが、1ナンバーのハイエースやキャラバンなどの場合は、100キロまで許容されるので大分余裕がありますね。

整理すると、気をつけていることは大きく2つで、

  1. 重量が50kg以上重くならないようにすること
  2. 道路輸送車両の保安基準の細目を定める公示【2005.11.09】別添27(難燃材料の難燃性の技術基準)資料に準じること←これを特に重要視

2番の「難燃材料」の定義と素材選びが、非常に難しいんです。そして、その中で認められた素材で1番の+50kgに収まるようにしようとすると、できるだけ軽い素材を選びたいのに、その際に使ってはいけない素材が存在するのです。
ここでは、注意すべき難燃性の素材選びについて紹介します。

人の乗っていないスペースに不燃素材が必要なの?

実は、荷室には難燃材料を使用しなくても良いと考えられます。
道路輸送車両の保安基準の細目を定める公示【2005.11.09】別添27(難燃材料の難燃性の技術基準)」資料では、適用範囲が「運転車室及び客室」とされており、荷室は含まれません。
具体例で示しますと、

バンの車の運転席や助手席まわりの内装に、合皮を貼って仕上げる場合運転席や助手席に貼る合皮は
難燃材料でなければいけません
バンの後部座席より後ろの部分、荷室の内側に内装としてついている木製パネルを一旦取り外し、合皮を貼って仕上げる場合荷室は「運転車室及び客室」ではないので、
難燃材料であることは求められていません
バンの後部座席の内装としてついている木製パネルを一旦取り外し、合皮を貼って貼って仕上げる場合バンの椅子を折りたたんでいる状態では荷室と考えられますが、人がのる場合は客室扱いとなりますので、貼る合皮は
難燃材料でなければいけません

    簡単に考えると、人が座った状態で道路を走ってよい場所には難燃材料を使い、人がのった状態で移動してはいけない荷室には、難燃材料は求められていないはずなのです。
    (「人がのった状態で移動してはいけない荷室」については、ちょっと例外があるのですが、ここでは話が厄介になるので、例外については意図的に触れません)

    ということで、私が現在考えている「荷室に、仕切りパネルでストーマを交換できるスペースを作る」場合、そこで使っている板などが「運転車室及び客室」に到達していない場合には「道路輸送車両の保安基準の細目を定める公示【2005.11.09】別添27(難燃材料の難燃性の技術基準)」資料で定められている難燃材料を使用することは必要ないはずなんです。
    簡単に言うなら、市販のカーテンやただの布で仕切っても問題ないのです。

    ところで、実際の車検の際には、OK・NGを出すのは担当する自動車検査員の判断となります。
    解釈について事前に相談していたとしても、担当した自動車検査員が異なると判断が異なる場合があるため、想定していない結果となり慌てるケースがあります。
    もっとも、検査基準は厳密に定められておりますので、資料と根拠を準備して説明すれば、最終的には問題ないと判断されるはずなのですが、余計な時間と手間がかかってしまうんですね。

    根拠については拡大解釈してはいけないので、架装メーカーなどでも事前に陸運局に行って相談します。しかし、この段階でいくら「問題なし」と言われていたとしても、車検当日に自動車検査官がNGと判断した場合、車検は通りません。
    「事前説明を□□陸運支局の○○さんと、こういう基準から問題ないと判断できると相談をして確認している」など、その時の資料や判断に至った項目を説明することはできるのですが、
    そのうえで担当する自動車検査員さんがどう解釈するのか、ご確認いただくしかないのです。
    事前に確認を取っていたとしても、当日担当した自動車検査員さんの判断が基準になる(ここがポイント!)のです。

    荷室に使う素材は「道路輸送車両の保安基準の細目を定める公示【2005.11.09】別添27(難燃材料の難燃性の技術基準)」資料で定められている難燃材料でなくても問題はないはずなのですが、「車検当日に解釈の相違で車検が取れない・更新できい」を防ぐためには、定められている材料で作ってしまうのが最も平和な対策なのです。

    「難燃材料」として誤って解釈しがちなこと

    ここまでの情報を一旦整理しましょう。
    ストーマ交換スペースとして仕切る場合、「布」にするのはやめて、「難燃材料として認められている合皮などで仕切りましょう」ということは、ご理解いただけたましたでしょうか。

    では、「難燃材料」とは何なのでしょう。
    例えば、ネット上を検索すると「不燃カーテン」というものが出てきます。
    消防庁の定める基準に則っている製品で、防炎ラベルが発行できるという、しっかりとした材料です。しかし、こういった商品は車検時に「難燃材料」とは認められません。

    道路輸送車両の保安基準の細目を定める公示【2005.11.09】別添27(難燃材料の難燃性の技術基準)」資料で定められている基準で検査し、難燃材料として認められていないものは、例えば建築基準法で認められている不燃材料であっても、難燃材料ではないのです。
    難燃材料については、

    • 一社)日本自動車車体工業会(JABIA)が管理しているJABIA登録番号のついている材料
    • FMVSS302、EEC 95/28(FMVSSはアメリカの、EECは欧州経済共同体)の定めた基準に則った材料
    • 資料内で「難燃性の材料とみなす」と明記されている鋼板、アルミ板、FRP、厚さ3mm以上の木製の板(合板を含む。)及び天然の皮革

    これらの中から材料を選ばなければならないので、建築用に定められた資料が添付できる材料で内装を作っても車検は通らないのです。

    保安基準適合性検査(難燃性試験)については、公益財団法人 日本自動車輸送技術協会さんなどが、自動車用品素材に関する難燃性の保安基準適合性評価(難燃性試験)を実施なさっています。
    架装メーカーになるのであれば、難燃性試験を受けて許可をとれば、JABIA登録番号のついている材料以外の材料を使用することも考えられるでしょうが、DIYの場合にはこういった機関に難燃性試験をお願いするのはかなりハードルが高いので、JABIA登録番号のついている材料を使用するか、難燃性の材料とみなす材料から選ぶのが無難ですね。

    JIS-1091難燃(A法ー3)というのもあります。JABIA難燃は、JIS‐1091に対し上位互換。
    JABIA難燃合格に合格していればJIS-1091難燃合格ですが、JIS-1091難燃に合格していてもJABIA難燃合格ではありません。
    JABIA難燃は、不燃、自己消化、難燃、不合格の4段階を判定でき、JIS‐1091は難燃か不合格かのみ。JABIAがガスバーナー、JIS‐1091がエタノールの火で検査するという違いがあるようです。

    頭が痛くなってきましたか?頑張って、もう少しだけお付き合いください。

    アルミ複合パネルが要注意

    軽トラなどのトラックに載せて使用するキャンピングカーのシェルや、トレーラーハウスのシェルには、外壁がアルミ複合パネルになっているものがあります。
    シェルのなかには、内壁もアルミ複合パネルとなっているものがあります。
    そのため、「キャンピングカーの車内もアルミ複合パネルで良いのでは?」と考えてしまうのかもしれません。

    キャンピングカーのシェルは、走行中に人がのれるスペースではありません。
    シェルは、荷物扱い。
    荷物なので、「道路輸送車両の保安基準の細目を定める公示【2005.11.09】別添27(難燃材料の難燃性の技術基準)」資料に沿う必要が無いのです。

    MYSミスティックさんのMini POP Beeという、シェル部分にも人がのれるようになっている車両があるのですが、こちらの車両写真を確認すると、内装まできっちり仕上げてあります。
    このような感じで、走行時に人がのって走行することが可能な車両は、「道路輸送車両の保安基準の細目を定める公示【2005.11.09】別添27(難燃材料の難燃性の技術基準)」資料に沿う必要があります。
    ここからは推測なのですが、MYSミスティックさんの製品はどの製品もしっかりと完成度の高いものですので初めから内装は難燃材料が選択されているのだと思いますが、
    DIYする観点で誤った自己解釈をしてしまうとこの時に「だからきっちりとした値段になってしまうのでは?」と思ってしまうのではないかと、心境を推測します。
    でも注意してください!その素材を選ばないといけないのは、値段を上げるためではありません。車検をしっかりと取得するために必要なのかもしれないのですから。素材選び、本当に大事なんです。

    私が現在考えている「荷室に、仕切りパネルでストーマを交換できるスペースを作る」ケースでは、ある段階で仕切りパネルをできるだけ軽く仕上げることを目的に、「アルポリック」や「不燃断熱パネル(不燃DP)」という商品の使用を考えました。
    例えば不燃DPは、国土交通省 防火材料「不燃材料認定」 を取得してますが、この不燃材料認定は先程説明したJABIA登録番号やFMVSS302、EEC 95/28の定めた基準に則った製品ではありません。

    そして、ここに私は引っかかったのですが、不燃アルミ樹脂複合板の中に不燃心材がある製品です。
    一番表面がアルミ板ではないんですよね。
    夜中に「これ使えば内装一気に軽くなるのでは」と一人素材探しで盛り上がっていたのですが、偶然にも鉄道車両で使える同社の素材を発見し、「なぜわざわざ別製品で日本鉄道車両機械技術協会による燃焼試験受けているの?」とひとり考え始めて、解釈を誤っている可能性に気が付いたのでした。

    もちろん、仕上げとしてこの外側にJABIA登録番号の書類が発行可能な合皮や、牛革など天然の皮革を貼れば問題ないのですが、それであればわざわざアルポリックや不燃DPなどを使用しなくても良いんですよね。簡単に仕上げられる板を探しているわけですから。

    調べると、アルミハニカム構造体の表面にアルミ板を貼ったアルミ複合パネルのような、軽量化のためのアルミ板が存在するようなのですが、価格や入手方法などの問題から、現段階では仕切りパネルとして採用するのは難しいと考えます。
    荷室を仕切る板なので、「別に難燃材料じゃなくても良いのでは」とも相当悩んだのですが、そもそもの目的は「車検を平和に受けること」なので、仕切り板だけ難燃材料ではないのはナンセンスと判断しました。

    鉄道車両などの内装材パネルが使えると良いのですが

    自動車用よりも数多くの人が乗って移動する鉄道車両の内装には、アルミ樹脂積層複合板が使用されています。
    例えば、積水樹脂プラメタルさんの「プラメタルFRK305/405」は社団法人 日本鉄道車両機械技術協会による燃焼試験の結果、不燃性が実証されております。こういった商品が仕切りパネルに使用できればかなりの軽量化が期待できるのですが、確認の範囲では残念ながらJABIA登録番号はついていないようです。
    判断基準が異なるので互換性が無いのは仕方ないことだとは思うのですが、より多くの人が利用する鉄道車両用の内装材が道路輸送車両の難燃素材とし認められることを願わずにはいられません。
    素人的には、鉄道車両にもディーゼルエンジンで動く車両がありますので、道路輸送車両と条件が近いのではと思ってしまうのですがね。

    仕切り板は不燃杉材を含む杉材、パイン集成材が候補です

    以上のことから、やはり内装材は厚さ3mm以上の木の板または厚さ3mm以上の合板にするのが無難であると考えました。

    ところで、木材にもさまざまな種類があります。
    例えば、非常に有名な春の天敵「杉」、高級温泉の浴槽や武家や寺院の建築に多く使われてきた檜(ヒノキ)などの木材の名前は、みなさんもご存じかと思います。

    • 杉は「軽く」て「取り扱いが容易」です
      床材や内装材、家具などに利用されます
    • ヒノキは「硬く」て「耐久性」があり、湿気の多い場所や耐久性が求められる場所に使われます
      床柱、お風呂の床や壁、造り付けの家具などに利用されます

    どちらも木材ですが、「軽く」ということを考えると、檜よりも杉を選ぶ方がよさそうです。

    軽い木材としては「パイン(松)集成材」「SPF材(松やもみなどを混ぜて作った木材)・ツーバイフォー材・ワンバイフォー材」「MDF材(木材の粉を圧縮させて作った木材)」「桐」「ファルカタ」「ラジアタ(パイン材の仲間)」「ベニヤ板」などがありますので、これらの木材を仕切り板にするのも良さそうです。ただし、強度面について注意する必要があるかと感じました。

    ところで、先程の例を杉や檜を例にしたの理由があります。
    ビービーウッドジャパンさんのFPウッド(不燃)やFPウッド(準不燃)など、無垢材に不燃の薬剤を添加することにより不燃材料として国土交通大臣に認定された商品があるためです。
    道路輸送車両については、厚さ3mm以上の木の板または厚さ3mm以上の合板であれば難燃性の材料とみなされますので、不燃材料で仕上げることは必須ではありません。
    しかし、難燃性の材料で車両を仕上げるのは、「火災時に場合に少しでも助かりやすいようにするため」です。
    車検だけを考えるなら、厚さ3mm以上の木の板や合板であれば良いのですが、予算や重量が許すのであれば「できれば不燃杉材を仕切り板にしたい」と考えたのでした。

    DIYキャンピングカーの壁を木で仕上げるのは「雰囲気が良いから」というだけではない

    ここまでお付き合いありがとうございました。ようやくまとめです。

    キャンピングカーをDIYで製作するのは、もちろん「木のぬくもりや雰囲気が良いから」という理由もあるでしょうが、車検をベースに考えた場合に「厚さ3mm以上の木の板または厚さ3mm以上の合板で表面を仕上げれば、車検通るから」なのです。

    車両の隙間に入れる断熱材などは難燃材料でなくても問題ありません。また、雨音や走行音を軽減するシート類も難燃材料でなくて問題ありません。さらにその上を難燃材料で覆えば、車検は通るのです。
    車の走行音を軽減するシートや断熱材を張った後に、もともと車で使用されているマットやルーフパネルに戻せる場所は元に戻す、荷室のように内装が無い部分に断熱材を入れた場合には、表面を厚さ3mm以上の木の板または厚さ3mm以上の合板、鋼板、アルミ板、FRPなどで仕上げれば、車検は通ります。

    この辺を考慮せずにDIYで製作したキャンピングカー動画やサイトの情報は数多く発表されていますが、実は「たまたま大丈夫だった YO!」という訳ですね。

    実は私、以前DIYでキャンピングカーを1ナンバーのバンに戻したことがあって、その際に素材選びでNGとなったことがあったので、この話をしっかり勉強したのでした。机上研究ではなく、実は失敗談だったというオチです。

    これらの情報が、僕のように気になるひとや、架装メーカーの新入社員さんなどの参考になれば、幸いです。